2ストロークエンジンの掃気 |
2ストロークエンジンの動作 | 吸気形式いろいろ | 掃気について | 排気システム |
2ストロークエンジンには掃気という行程がある。 4ストでは上昇するときに燃焼ガスを追い出すのだが、2ストではピストンの下降によりクランクケース内の新気が掃気ポートを通じて燃焼室に押し出され、同時に開きはじめた排気ポートから燃焼ガスを追い出す。もちろん、排気ポートが開くことにより大きな圧力差が発生することでチャンバーへ吸い出される効果のほうがはるかに大きい。このときに新気まで排気ポートに流れ出してしまうのだが、排気チャンバーの脈動効果により新気は燃焼室に押し戻されるようになっている。とはいっても、少なからぬ量の新気が出て行ってしまうため、燃費が悪くなり、4ストロークの2倍の燃焼回数を持ちながら2倍の出力を得ることが出来ないでいる。また、未燃焼ガスが排出されてしまうため大気汚染の原因とされている。 |
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☆ポートの配置 | |
上の図は補助排気ポートを持つ形式のポート展開図である。 排気ポートの面積を稼ぐためにメインの排気ポートの両サイドに副排気ポートを設けている。 副排気ポートは主排気ポートよりも早く開くよう高い位置に設けられており、一般的には排気デバイスによって低中回転時は閉じられている。 |
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こちらは補助排気ポートを持たず、開口面積の大きい排気ポートをピストンリングの引っ掛かりを防ぐために リブを立て分割したもの。市販車ではホンダNSR250R、スズキRGV250Γに用いられた形式。 主排気ポートの上端部の弦長を広げることでポート面積を拡大している。 |
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☆実際のシリンダで見るポート配置。(排気ポート上部の溶射被膜が剥げているのはご愛嬌) | |
まさに穴だらけといえるシリンダのポート配置。 主掃気ポートの真上に副排気ポートが配置されている。 |
排気ポート側から見たポート配置。 排気ポートに正対するように配置される第三掃気ポート。 |
シリンダをクランクケース側から見た画像。 出口に比べ入り口は広い。 広い入り口から掃気通路を絞り流速を高めている。 |
第三掃気ポート入り口。 シリンダに吸気ポートを持たないクランクケースリードバルブ式では掃気ポートのレイアウトに自由度が増し高出力かしやすい利点がある。 |
☆掃気の流れ 掃気ポートから流れ出す新気は直接排気ポートに向かうのではなく、燃焼室をめぐるようにして排気ポートに向かう。 主掃気ポートは排気ポートの対面の壁にぶつかり燃焼室のアールに沿うように反転し排気ポートに向かう。 ここから「反転掃気」という形式名が採られている。 補助掃気、第三掃気ポートは主掃気ポートではカバーしきれない部位を掃気して排気ポートに向かっていく。 |
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排気、それよりも数の多い掃気ポートによってシリンダは穴だらけである。 シリンダに開けられたポートのせいでシリンダは歪みやすく、シリンダが焼き付きやすかった。 アルミシリンダに硬質かつ潤滑性に優れたメッキ(カワサキは溶射)が施されることで熱歪みに強いシリンダが実現し、ポートも大型化され高出力化に拍車が掛かった。シリンダに吸気ポートを持たず、吸気経路が短く、直接掃気ポートに混合気を流し込めるクランクケースリードバルブ式の吸気方式が採用されたことも大きな要因の一つだ。 ※過去にはアルミシリンダ+クロムメッキというものはあったがニッケル分散メッキのような硬度・潤滑性は持てなかったようだ。 高出力化には排気、とくに排気チャンバーに目が向けられることが多いが、実は掃気の工夫によることのほうが大きいかもしれないと考えている。実際に燃焼室に入ってからの新気の流れは解明されているわけではない。すべては経験に基づくもので理論化されていない。理論よりも現場で試行錯誤を繰り返しながら性能向上が図られてきたのが2ストロークエンジンともいえるだろう。 |
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