2stroke with powerband -It's always smokin' on the road


1号車再生記 その2
バイク便ライダーと共同開発したシールド撥水剤 VISOR SCIENCE
平成18年4月17日
KR-1 タイロッド KR−1系エンジンのお約束とも言うべき排気デバイス連結タイロッドの破損。ロッドエンドにはめ込まれたボールが振動と摩擦によって摩耗し外れてしまう。、シリンダヘッドに貫通している排気バルブのオイルシールからもれ出てくる燃え残りのオイルに、ラジエターを通過したほこりが付いてゴリゴリとボールをやすりがけしているようなもんである。1本が1600円くらいして、寿命が1万キロそこそこである。値段はかまわないが耐久性のなさにほとほと困っていたのだ。ちなみにKR-1もKR-1Sもタイロッド、プーリーは同じものが使われている。
プーリーと製作したタイロッド。チタン製で超軽量。 そこで、仕事で付き合いのある材料屋さんで部品を集めて作ったのがコレ。ちょっとばかりじゃ売ってくれないので10数セット分も材料を買うはめに。タイロッドはチタン製だ。チタンを選んだのは軽くて強度があるから。アルミ製も試したけど付け外しのときに曲がってしまったので×。タイロッドとボールは別体式にした。ボルトつきのボールをプーリーに直接付けて、樹脂製のロッドエンドをはめ込んで連結する。いちいちボールを外さないでタイロッドの着脱が出来る。3本分のロッドとボールの重量は約10g。純正の半分以下の重さだ。
パチンと簡単に着脱可能。メンテナンスフリー。 プーリーとタイロッドを連結したところ。
ロッドエンドは、はめ込みが少し固いのでプライヤーで軽くはさんでパチンとボールにはめてやる。外すときはプーリーを手で押さえ、プライヤーでロッドをつかんでひねってやると簡単に外れる。ロッドエンドはクローズドタイプだから防塵性にも優れている。すでに1万キロ以上使用しているがまったく問題なし。
さて、1号エンジンからシリンダを外したところで3号シリンダ(KR−1)と比較。
左がKR−1のモノ。右がKR−1S。
上下に重なって見えるポートのうち、上にあるほうがサブ排気ポートだ。あきらかにKR−1Sのサブ排気ポートが大きいことが見て取れる。パッと見は倍くらい違うんじゃないかと思うぐらい断面積が違う。この部分を見るだけでもSのほうが高回転高出力型のシリンダであることがわかる。自主規制といいながらパワー競争が熾烈だった時代状況がしのばれる。
こちらは3号の腰下。
ピストンを外したところだ。スモールエンドベアリングは傷みがないのでそのまま使う。クランクには給油穴からオイルをたらしておく。
3号ピストン。
ピストンも痛みが少なかったので、そのまま使用。
吹き抜けの痕などをサンドペーパー、オイルストーンで軽くあたっておく。ピストンリングの溝にもペーパーを差し込んでお掃除。各部にバリなどがないか丁寧に調べておくことも重要。画像の手前にあいている穴は、ピストン裏から混合気を導いてシリンダの潤滑・冷却をするためのもの。穴の周りは硬度の高そうなコーティングが施されている。
ピストンピンも焼け色はついているがキズはないので再使用。
何でもかんでも新品に換えりゃぁいいってもんじゃない。
使えるものはいつまでも使う。
こいつにもオイルを塗りこんでおく。
しかしピストンリングは新品を使う。
だって、リング溝にはまって膠着してたから。2本あるリングの上下(上がキーストンタイプ)を間違えないように組む。カワサキなので、わかりやすいように刻印などは打ってない。
ピストンを組み付けたところ。
ピストン上部にはカワサキといえども矢印の刻印が打ってあるので矢印方向を排気側に向けて組まねばならぬ。
ピストンピンを差し込むが、無理やりグリグリ押し込んではいけない。
スムーズに入るポイントを探してはめ込んでやる。さすがにスカスカじゃないのでスコンとは入らないが、ククッという感じで押し込めればヨシ。ピストンピンクリップを丁寧にはめて組み付けは終了だ。
シリンダヘッドにあるKIPSバルブのオイルシールをはめ込む。
事前にストーブでヘッドを暖め膨張させておくとスムーズに収まる。
しかし、このオイルシールの寿命は短い。短いというかマトモに機能していないといった方がいいくらいだ。2千キロも走ればココから排気漏れが始まる。構造的欠陥というしかなかろう。
シリンダを組み付けて、KIPSバルブをいれる。
バルブの収まる穴もカーボンが溜まるのでキチンと掃除しておく。
組み立てのときは、多少のガタがあるせいか排気ガスに叩かれてキンキン音をさせることがあるが、しばらくすればオイルの燃えカスが隙間に入り込みダンパーとなって音が消えてくる。
何回もクランキングさせピストンの収まりのいい位置をだしてやる。ヘッドを仮組みしてからシリンダベースの締結ナットを締める。こうしないとゆがみが出て排気バルブの動きが渋くなったり、ヘッドガスケットの吹き抜けを起こしたりすることがある。シリンダの締結ナットはトルクレンチがかからないので適当に締める。よく、どのくらいで締めればいいのか?と聞かれることがあるが、緩まない程度に締めると答えている。答えになっていないといわれるがそんなもんだ。
とりあえず、エンジンの作業は終わり。
ウォーターポンプのメカニカルシールが逝っていて、ギヤオイルに水が混入するかもしれないが、とりあえずは車体に積んで動かしてみなければ分からないので後回し。クラッチも同様だ。今後は車体関係の作業になる。
※平成18年4月29日追記
現役2号車がステータコイル損傷により不動となったため、急遽エンジンを載せ換えた。
危惧していたギヤオイルの乳化が起きたが、ラジエータに漏れ止め剤(リークエンド)を入れ、ギヤオイルを交換したら直ってしまった。クランクのオイルシールも抜けておらず、とてもパワフルなエンジンである。
1号車にはスペアエンジン(あと4つある)を組みなおして積む予定。