2stroke with powerband -It's always smokin' on the road.


maintenance10
平成18年6月18日 ミッション交換
4月の末にステータコイルが壊れ、3号エンジンを載せていたが、シフトペダルが戻らなくなるトラブルが続いていた。
ずっと戻らないまんまであれば、あっさり部品を換えていたところなのだが、特殊なケースでのみ発生するトラブルだったので、なかなか手を付けられずにいた。街乗りでは起こらず、ワインディングのみで発現し、しかしながらシフトアップの場合には問題ない。低いギヤでエンジンを回してミッションまで熱くなってくると起きるトラブルだった。症状が出て、しばらく放っておくと直ってしまったりとよく分からない状態が続いた。
前に別のエンジンで同様の現象が起きたことがあったが、ギヤオイルが多すぎたことが原因だったようで、そのときはギヤオイルを減らしたら症状が治まった。今回もギヤオイルを減らしたり、交換してみたりもしたが全く改善しなかった。
また、チェンジ機構のトラブルと考えて、チェンジシャフトを交換し症状は納まったかに見えたが、やはり峠に出かけると症状が発現した。ココにいたってはどうしようもないのでミッションそのものを交換することにした。
ギヤオイルを抜く。
ドレンボルトはミッションケースの真下ではなく、横についているので、車体を思いっきり傾けてやらないとオイルを排出しきれない。
ギヤオイルを抜いているついでにクラッチを外してしまう。
クラッチを外したら、ミッションのメインシャフト(画像中央)を止めているサークリップ、二股になっているパイプ(画像左)の取り付けスクリュー、キックのアイドルギヤを止めているサークリップを外す。エンジン右側面の作業はコレだけ。ちなみに動力は画像右上のクランク右端のギヤからクラッチハウジングのギヤに減速されて伝わり、クラッチが止められているミッションのメインシャフトに伝わっている。ここまで作業を終えたら、レーシングスタンドを掛けて車体を正立させる。
ドライブスプロケットを外す。
当然ながら、リヤアクスルを緩め、チェーンに遊びを作ってやらなくてはスプロケットから外れない。スプロケットは内側がギザギザになったプレートをスプロケットにはめ、ギザギザの位置とカウンターシャフトのスプラインの位置をずらして引っ掛かりを作り、キャップスクリューを締めることで抜け止めにしている。レンチを掛けて、いざ緩めようと思ったら、クラッチを外してしまったせいで、ギヤを入れてもスプロケットが回る。バイクをまたぎリヤブレーキを踏んだままでレンチを掛けて緩めた。
ドライブスプロケットを外し、下にあるシフト外部機構のカバーを取ったところチェンジシャフト、ギヤポジションレバーを外してミッションカバーの締結ボルトを抜いていく。ボルトを全て抜いたら、プラハンで周囲をコンコンとシバく。ある程度動いたら、右側面からメインシャフトを叩いてやると、ゴソっとミッションが抜けてくる。
カセットミッションというのはとても便利だ。
取り外したトランスミッション。
パッと見たところ、たいして痛んでいるようには見えない。
シフトドラム(画像左)の波型の溝にもバリが出ているわけでもない。
ミッションからシフトフォークを抜く。
左右のシフトフォークはカウンターシャフト側に掛かり、中央のシフトフォークがメインシャフト側にかかる。アタリが出て光っているが、金属同士接しているのだからこのへんは当たり前だ。フォークの爪の部分を指でなぞっていくと・・・。中央に位置するシフトフォークの爪にザラザラ感があるではないか!
交換予定のミッションから同じ部分のシフトフォークを抜いて比較してみた。
左が降ろしたミッションのもので、右がこれから入れるミッションのもの。
左のフォークの爪の部分が鋭くなっている。先端部も少し内側にエグれている。
う〜ん、このシフトフォークのせいなのだろうか???まぁ、見た目には引っかかりやすい削れ方をしているのは確かだ。
しかしこんな削れ方をしているとは、前の持ち主はどんなシフトチェンジをしていたのであろうか?
※やっぱりココが原因ではなかった。
以前、引き揚げてきたゴミエンジンから抜いたミッション。
キャブが抜かれていたせいで、クランクからシリンダまで赤錆だらけで使えないエンジンだったが、クラッチやミッションが使える状態だったので取っておいたものだ。あまり走行していないエンジンだったようで、キレイなミッションだ。あらかじめシフトドラムの溝、シフトフォークの爪、フォークがかかるギヤにある溝にオイルを塗っておく。
からっぽのミッションケース。
左のベアリングのはまっている穴がメインシャフトの納まるところ。右の穴にはカウンターシャフトが納まる。
ミッションカバーとの合わせ面をアセトンで脱脂し、シンエツKE45を塗る。
KE45はクランクケースの合わせ面やマフラーの穴埋めにもつかえる便利な液状ガスケットだ。
ガスケットを塗ったら、合わせ面に触れないよう注意深くミッションを納めていく。左手でカウンターシャフトのスプロケットが掛かる部分を持ち、余計なところに引っ掛からないように手で回しながらはめ込む。反対側の穴にメインシャフト、カウンターシャフトが掛かったら、右手の指をメインシャフト中央の穴に入れ、ズレないようにしながら左手をグッと押し込む。この際、合わせ面にあるノックピンがきちっとはまっていることを確認しなくてはいけない。最後に軽くプラハンで叩き確実にはめ込む。ミッションがはまったら、締結ボルトを締め、チェンジ機構をもとどおりする。右側面のほうもサークリップなどを確実に掛け、クラッチを元のように組みなおす。
シフトペダルを付け、スプロケットもチェーンをかけて組み付け直す。
スプロケットカバーを止めようとしたら、ミッションケース側のネジ穴が一つバカになっていたことに気づく。カバー無しだとチェーンの巻き上げる水などでエンジンがモノスゴク汚れるので、バカになったネジ穴にシンエツKE45を詰め、ボルトのギリギリ掛かるところで締め込みを終了した。KE45は弾性を残して乾燥するのでボルトが抜け落ちることを防いでくれるであろう。当然ながら、ときどきボルトが抜け落ちていないか確認する必要がある。
最後にギヤオイルを入れて終了。
ギヤオイルは物置にあったトヨタのディーゼルオイル。
以前乗っていたハイエース用に買っておいたものと思われる。
粘度は10W−30。
所詮ギヤオイルなので、別にディーゼルオイルでもなんら問題ない。
もともと指定オイルが4ストオイルだし。
というわけで、ミッションを交換してみた。
最初はレーシングスタンドに掛けた状態で後輪を浮かし、各ギヤをいれていく。
とくに違和感もなく、スムーズに変速できる。ニュートラルも出しやすい。
とはいえ、所詮はカワサキなのでガシャガシャ感は否めない。そのあと、試乗に出かけてみたが何の不具合もない。
チェンジ機構どころかミッションそのものを入れ替えたのだから、トラブルは解消したと思いたいが、最終的にはトラブルの発現したワインディングでの高い負荷が掛かった状態でテストしてみなくてはなるまい。
6月22日
ミッションの交換後、何度か通勤に使ってテストを重ねていたが、特に問題は起きなかった。
しかし、高回転まで回したあとに減速、シフトダウンを繰り返してテストしたところ症状が再発した。
ミッションを丸ごと交換しても再発するとはおかしいと考えていたところ、1箇所だけパーツを換えていないところがあることに気づいた。シフト外部機構のカバーである。このカバーにはチェンジシャフトが通る穴が開いており、ニードルベアリングでシャフトを支持している。もしかしたら、ベアリングが壊れていて、高回転時の振動や熱でニードル(ころ)に傾きが生じチェンジシャフトの動きが悪くなるのかもしれないと考えた。
早速、ゴミエンジンについていたカバーを取り付けてみた。レーシングスタンドに車体を載せ、エンジンを掛け後輪を回した。(よい子は危険なのでまねしてはいけませぬ)1速〜6速までガチャガチャとギヤチェンジをしながら様子を見る。5分ほどしたところで突然シフトとが渋くなりだした。よく見るとシャフトを通す穴からオイルがにじみ出てきている。う〜ん、コレでもダメかとおもったが、懲りずに別のスペアエンジンからベアリング・オイルシールともに問題のなさそうなものを外してきて付けてみたら、段違いにシフトが軽くなった。負荷をかけてもシフトが渋くなることはない。とりあえずこれで様子を見てみようと思う。