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絶滅危惧種である2ストバイクにとって、日々のメンテナンスは重要である。 いや、絶滅を危惧されていないバイクであってもメンテナンスは必要だ。 しかしながら日頃のメンテナンスを欠かしていなくてもバイクは壊れていくものである。 どんなに手をかけていても諸行無常の理から逃れることは出来ない。形あるものは壊れるものである。 このページはそのような宇宙の真理へのささやかな抵抗を記したものである。 |
※注 メンテナンス記録なんぞを書いていると整備好きな人間、器用な人間と勘違いされることが多い。 まったく逆である。整備なんかしたくてしているわけじゃない。常に調子のいい状態でバイクに乗っていたいだけである。 年間走行距離が約2万キロ。すでにオドメーターは一回りしてしまっているので、そこかしこが痛んでいる。 壊れたら直さねばならないが、ビンボーなので自分で整備するしかないし、他人にイジられるのもキライなので仕方がない。 壊れなくても日常的なメンテナンスや消耗部品の交換はしなければいけない。 また、常に自分でイジっていると感覚が研ぎ澄まされてくるのか、他人にはわからない違和感も感じてしまうのだ。 走っていれば、消耗したり、汚れてフィーリングが変化していくので、ベストな状態に戻すための整備をしなくてはならない。 部品の欠品が多く、残存個体数も少ないバイクなので、部品を常に収集しており、そちらの整備も欠かせない。 そうすると、年がら年中バイクイジリをしていることになってしまう。 「バイク屋さんに出したことないの?」と聞かれることがあるが、貰い事故の修理以外でここ7,8年は行っていない。 また、器用かといえば、非常に不器用な部類に入ると思うが、それを補うために工具が存在すると考えている。 でも、使っている工具のほとんどはホームセンターで購入した安モンばかりである。 ちなみに、一番苦手でキライなことは「洗車」である。 |
☆平成17年6月22日 エンジン載せ換え KR−1系のエンジンは1軸1次バランサーを持っている。このバランサーはギヤオイルによって潤滑されているが、バランサーに装着されているオイルシールがダメになってしまい、エンジン左サイドにあるダイナモカバー内にオイルが漏れ出してしまった。エンジンストップリークを使用してみたが、改善どころか状態は悪化してしまい、エンジンオイルよりもギヤオイルの減りのほうが早いという笑えない事態になってしまったので8万7千キロ走行を機にスペアのエンジンに乗せかえることを決定した。スペアのエンジンは大学時代に友人が乗っていたもので、一時停止を無視して飛び出してきた赤十字の献血輸送車に激突して廃車になり、その後10年間不動だったエンジンである。 |
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まずは下拵え。 コンロッドからピストンを外し、ピストンヘッドのカーボンをアセトンで落とす。ピストンスカートの当たりの強かった部分は耐水ペーパーで軽く磨く。ピストンリング、ピストンピン、スモールエンドベアリングは新品を使用。通常はこれらの部品にエンジンオイルを塗りつけるのだがベアリングはローラー部分を回して中まで行き渡るように塗りこむ。 |
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次はシリンダ。 10年前に分解して、グリスを塗りまくって保管しておいたもの。キャブセッティングが薄かったのか、排気ポート上部の壁面が多少荒れていたがカワサキなので気にせず使用する。このシリンダ壁面にもオイルをしっかりと塗りこむ。ポートの中まで入り込んでしまっているが、クランクケースまで落ちていくだけなので気にしない。 |
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ピストンをコンロッドに取り付けたところ。 ここではすでに外しているが、クランクケース内にゴミを落とさないようにウエスを詰め込むのがよろしい。当然ながら、ピストンを組む前にベースガスケットの残りを剥がしておく。細身のスクレイパ−が作業しやすい。ピストンリングはトップリングがキーストンタイプだ。カワサキなので見分けが付くような印は付いていない。横から見て斜めになっているほうがトップリング。トップとセカンドを間違えて組んでもエンジンはかかるがパワーが落ちる。恥ずかしながら経験済みだ。 |
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シリンダを組んだところ。 まずはベースガスケットを入れ。そしてリングを回り止めノックピンの位置からズレないように保持して、まっすぐにシリンダを入れてゆく。リングが引っかかって上手く入らない場合は無理をせず、もう一度やり直し。入るときはスンナリ入っていくものだ。シリンダが入ったら、キックペダルを手で回してクランキング。ピストンやシリンダに塗ったオイルがはみ出てくるからキチンと回収。もったいないので捨てずにガソリンに混ぜて再度潤滑してもらいます。シリンダに開いてる大きな二つの穴は排気デバイスKIPSのバルブが収まるところ。 |
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次にシリンダヘッドの組み付け。 KR−1系エンジンではシリンダの締結ナットはヘッドを仮組みしてから締めなくてはいけない。 ヘッドを組み付ける前に燃焼室の汚れをアセトンで落としておく。このヘッドはこのエンジンのものではなくもう一つのエンジンから外したもの。頑固なカーボンの堆積は無かった。合わせ面に残ったガスケットのカスもきちんと落としておく。KIPSの排気バルブをシリンダの所定の位置に差し込んで、厳かにヘッドを載せていく。ヘッドが載ったらKIPSの駆動プーリーとタイロッドを組み付ける。プーリーは排気バルブにネジ止めされるのだが、ココにネジロックをかけるとかなりの確率で外れなくなるので決してつけない。しかしながらプーリー間を結ぶタイロッドはネジロック必須だ。ただし、あまり高強度のネジロック剤は使わない。 ヘッドを仮組みしたらシリンダの締結ナットを締めこむ。締め込む前にキックペダルでクランキングして、ピストンとシリンダの位置関係を自然な位置に持っていく。 締結にはトルクレンチを使いたいところだが、ソケットがはまらないので使えない。よってメガネレンチよる手ルクでの締め込みとなる。 シリンダを締結し終えたらヘッドボルトを締める。ここはトルクレンチが使えるので使用するが、慣れてくると大体の締め付けトルクは勘で分かるようになるものだ。 この画像ではエンジンは直立しているように見えるが、実際は軸配置まで極度に前傾したエンジンなので、下に支えを置いて立たせている。車体からエンジンを降ろすとかえって整備しにくいこともある。 |
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エンジンを降ろしたところ。 レーシングスタンドを掛け、画像に見える丸太をエンジンの下に差し込んでエンジンを降ろす。 先に補機類を外しておく必要があるが、エンジン自体は2本のボルトでフレームに吊り下げられているだけだ。 エンジンの重さも40キロくらいなので充分手で持てる。 作業をスムーズに行うためには、この丸太のようにちょうどいい高さの台を確保しておくことが重要だ。 |
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エンジンを降ろすのとは逆の手順でエンジンを積む。 フレームの下に置いておいた丸太の上にエンジンを載せ、丸太をグリグリ動かしながらマウントボルトの穴の位置を合わせる。 先に下のボルトを通し、次に上のボルトを通す。あとはトルクレンチを使って指定のトルクで締め付ければ終わり。 |
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エンジンが載ったら補機類を積んでいく。 実はこちらの作業の方がはるかに面倒である。 クランクケースにリードバルブを取り付けたあとにキャブレターを装着する。キャブはKR−1系自慢のPWKキャブである。吸気系をイジってもセッティングが出しやすい優等生である。写真を撮りそこねたが、リードバルブ室及びリードバルブは加工してある。クランクまでの距離を詰め、なおかつ第三掃気ポートに向くように角度をつけている。 |
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エンジンも無事にかかり、オイルポンプのエア抜きを終えて出来上がり!と思ったら、しばらくして片肺になってしまった。原因は車体にぶら下げておいたときに、キャブのフロートがおかしくなってタンクからガソリンが落ちなくなっていたため。仕方なくキャブをばらして組みなおし、全てが終わったのは深夜1時ごろ。あ〜疲れた・・・。 |